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農薬の深イイ話

2023.03.01

駆け足の春

―ライオンのごとく春は来るといふ―
緯度は日本よりはるかに高く、サハリンあたりに位置する同じ島国のイギリスには、「3月はライオンのようにやって来て子羊のように去る」という諺がる。一日のうちで雪や雨があったかと思うと晴れ間が出るなど激しく目まぐるしく天候が変わることを言っている。日本でもこの時期三寒四温といわれるように、同じように天候変化が目まぐるしい。春の先触れともいえる春一番の強風は、今年は先月の19日に北九州と四国に吹いたがその後はまだ便りがない。去年は東京では前年より一月も遅い3月5日に吹いた。そもそも一月に強い風の吹く日数は一年のうちで3月が最も多いという。今年はいつ吹くのか、あるいは吹かないままで春になってしまうのか。
不安定な天候はいわば春への助走である。わたしたちも含めて生き物たちはそれに合わせてせわしない日々を過ごすことになる。
しっとりとした雨と暖かな太陽の光を受けて草木はたちまち芽を出し、花を咲かせる。北へ帰る鳥たちはそれぞれ仲間を募って風を待って北へ帰ってゆき、代わって南の風に乗って夏鳥たちがやって来る。落ち葉の下や土の中、あるいは木の枝につかまって眠っていた虫たちは暖かさを感じて眼醒めだし、うようよとはい回ったり、かたい鎧を脱いで青空に飛び立ったり、日毎に生き物たちの賑やかさが増す。
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ここ南関東の海辺の地では、既に冬のさなかでも陽だまりでは空色をしたオオイヌノフグリは咲いていたが、やっとホトケノザやタネツケバナも咲いてきて仲間が増える。白い梅はもう散りだすが後を追って豊後梅の薄いピンクがまだ裸の多い木々に彩を添える。フキノトウの球が割れて日に日に茎をのばして地味な花を咲かせる。毎年摘んできてはほろ苦い佃煮にするのだが、勢いが強いからあっという間に大きく伸びて堅い蕗の薹になってしまう。さすがに月初めではまだツバメの姿はない。川の中ではまだヒドリガモなどぐずぐずしている冬鳥の姿があるが、その数はずっと少なく、下旬にはそれらも見られなくなる。アケビの蔓に芽が割れだすと、たちまちつぼみも出て花を咲かせ、細い糸のようなツルはするするっとまるで薮の中から伸びた長い手のようである。山椒の芽も早い内に摘まねば堅くなってしまう。ツクシもどんどん胞子を飛ばすようになる。中旬を過ぎると桜の便りが届くようになり、去年は17日に福岡で開花し、20日になって東京で開花している。と同時にやっと待ちに待ったツバメの姿が空に流れる。やはりツバメの姿を見ると、本当に春が来たという実感がわく。オタマジャクシは早くも杓子の姿になってうようよと田の中にたむろする。寒さをこらえて葉陰や落ち葉の下で越冬していたキタテハやキタキチョウが舞いだし、鎧を着て眠っていたモンシロチョウなども羽化してくる。こうして日毎に生き物たちの姿が増え、賑やかな華やかな春になってゆく。
ところで昨年の暮れに蛹化したアカボシゴマダラの蛹がこの冬を越した。薄黄緑色の体色は薄汚れた色に変わっているが、死んでいるようには見えず、そのうち羽化するのではないかと、見守っているところである。普通アカボシゴマダラは2センチ弱の幼虫の姿で越冬するはずなのに、どうしたことだろうか。 (鎌倉市在住 山室眞二)

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