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農薬の深イイ話

2022.04.01

バイオスティミュラント

農林水産省は2021年5月に「みどりの食料システム戦略」を策定しました。その中で
2050年までに化学農薬の使用量の50%削減(リスク換算)と有機栽培面積を25%拡大することが明記され、その実現手段の1つに、革新的作物保護技術の開発の防除資材としてバイオスティミュラントの利用が例示されています。

バイオスティミュラントとは
バイオスティミュラントとは、農薬でもなく、肥料でもなく、土壌改良剤でもない、新しいカテゴリーの資材です。植物あるいは土壌に処理し、より良い生理状態を植物体にもたらす様々な物質や微生物、あるいはそれらが混在する剤で、植物のストレスを軽減することにより、植物が本来持っている能力を引き出し良好な影響を与えるものと言われています。

バイオスティミュラントは英語表記では「Bio Stimulants」。ヨーロッパで作られた造語で「Bio」は生物、「Stimulants」は刺激ですから、日本語に直訳すると「生物刺激剤」と言われています。この“生物を刺激する”とは、植物に供することで何かしらの作用をもたらし、植物の能力と農作物の価値を高めるということです。

「農薬」は害虫や菌、雑草に直接的に働きかけるものですが、バイオスティミュラントは高温・低温・乾燥や酸欠、塩ストレスといった非生物的ストレスを緩和します。「肥料」は植物が直接吸収する栄養素を供給するものですが、バイオスティミュラントはその肥料の吸収を助ける働きをします。「土壌改良材」は土壌に物理的・生物的な変化を与えるものですが、バイオスティミュラントは植物の生理状態をより良くします。

開発・普及の動き
世界におけるバイオスティミュラントの活用は年々増加しており、2021年にはおよそ2,900億円の規模に達するという試算も出ています。特にヨーロッパでは、ヨーロッパバイオスティミュラント協議会(EBIC)が拠点となり、専門企業の設立や新製品の開発などが精力的に進められています。
国内では、2018年に肥料や農薬などを扱う8社による「日本バイオスティミュラント協議会」が発足し、国内農業への貢献を目標に掲げ広く普及させるために各種研究やセミナー開催などのほか、製品の規格化や標準化に向けた実質的な準備に取り組んでおり、会員も年々増加しています。

課題―法的位置づけてと規格化―
バイオスティミュラント資材が普及していくためには様々な課題があります。その1つは法的な位置づけです。国内で使用可能な農業資材は、農薬に関する農薬取締法、肥料に関する肥料取締法、土壌改良材に関する地力増進法によって定められています。しかし、現時点でバイオスティミュラントに適用される法律はありません。バイオスティミュラントの取り扱いは、農薬取締法・肥料取締法・地力増進法の3法の中間に位置すると考えられます。今後、農薬との混同を避けるためにも、消費者が理解しやすい表記で販売することが必要ですし、できるだけ早い段階でバイオスティミュラントに関わる法整備が望まれます。
2つめは、製品の安全性と規格化です。バイオスティミュラントの安全性を証明するには、さまざまな品質テストによる解析やデータの開示が必要です。消費者に対しては、成分や作用、効果が現れる仕組みについて説明する必要があります。また、高品質のバイオスティミュラントを均一に生産するには、国内の規格化をはじめ、評価システムや保証、安定した技術や製造工程などの標準化が必要です。
望まれる早急な対応
国が革新的作物保護技術資材として取り上げているバイオスティミュラントは、現状では法的位置付けや評価方法、規格化・標準化があいまいなままになっており、対応の具体的な動きは示されていません。
しかし、農業専門誌やインターネットで、バイオスティミュラントと称する商品が多数紹介され、高額で販売されています。これらの商品は評価方法の明確化や品質管理が十分におこなわれているとの保証はありません。問題が生じると商品の信頼性はもとより、バイオスティミュラント自体の信頼性が大きくそこなわれてしまうことにもなりかねません。早急な対応が望まれています。

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