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農薬の深イイ話

2021.12.01

サツマイモ基腐病

●被害が拡大し、さつまいもが高騰
最近テレビで「旬の味覚 さつまいもにある異変 価格高騰 農家を悩ませるある問題」などと報じられました。原因はサツマイモ基腐病で、一番成長期の夏場に全国的に長雨が続いたのと、高温だったことで多くのところでイモの腐れが発生し不作になり、価格の高騰につながったとのことです。

●2018年に沖縄県で初めて発生確認
サツマイモ基腐病は、100年前にアメリカで発見され、この10年の間にアジア地域にも被害が起きており、日本には2018年11月に、沖縄県で初めて発生が報告されました。糸状菌による病気で、発症すると地際の茎が黒変し、葉が黄色や紫色に変色して生育不良になります。地下の芋も蔓とつながっている方から変色しカビの臭いがします。

鹿児島県と宮崎県は2020年に引続き、2021年6月に注意報が出されました。2021年、鹿児島県ではさつまいも圃場の6割が基腐病の被害を受けたとのことです。特殊報は2020年10月に福岡県、熊本県に出された以降、長崎県、高知県、岐阜県、静岡県に出され、2021年には群馬県、茨城県、東京都、千葉県、岩手県、愛媛県、福井県、埼玉県、石川県、山形県、北海道、鳥取県、長野県で出され全国的に広がり、さつまいもの生産に大きな打撃を与えました。

●我々の生活とさつまいも
毎年秋から冬になると焼き芋のシーズンになり、甘くてほくほくしたさつまいもにファンが多くなり、焼きいもだけでなく新しいスイーツとしての食べ方も広まっています。
さつまいもは全国で約3万3千ha(2020年)栽培され、69万トン生産されており、半数が生食用で、その他にデンプンやアルコールの生産に使われています。
都道府県別の作付面積は下記の通りで(2019年)、鹿児島県と茨城県で半数以上を占めています。
 鹿児島県   11、200ha
 茨城県    6、860ha
 千葉県    4、040ha
 宮崎県    3、360ha
 徳島県    1、090ha
 熊本県     897ha
 静岡県     540ha
 
一口にさつまいもといっても各地で様々な品種が栽培され、それぞれ特徴があります。焼き芋に適した甘みの強い「安納芋」、芋焼酎に使われる「黄金千貫」や生食用の「紅あずま」、「鳴門金時」等が知られています。

●被害の状況
サツマイモ基腐病の病徴は、本圃では定植された苗の地際部分の茎が黒変し、次第に地上部の茎葉、地中の塊根へと進展し、やがて地上部が枯死し、塊根が腐敗します。感染経路として                
・感染した種イモ・苗による「苗感染」
・本圃での感染残渣による「土壌伝染」
・発病茎葉の接触による「接触伝染」
・雨水等の停滞による「胞子伝染」
があり、特に梅雨、秋期の長雨や台風の影響でまん延しやすくなります。また、地際から病徴が現れることから初期には被害が目につきにくく、梅雨明けや秋期になって初めて被害に気がつくことが多く、その頃は手遅れになっていることも少なくありません。

●防除対策
サツマイモ基腐病対策の基本は、圃場に病原菌を侵入させないことです。 まず、苗からの持ち込みを防ぐため、種イモ専用圃場の設置、定期的な苗(種イモ) の更新、苗床消毒および苗・種イモの消毒による健全種苗生産は必須です。 次に、本病は罹病残渣中の病原菌が土壌中に集積することによっても発病すると考 えられ、いわゆる「連作障害」です。圃場で病原菌を増やさない、病原菌 を残さない対策が必要で、「増やさない」ための発病初期の防除対策や病原菌を まん延させない環境づくり、「残さない」ための残渣対策や土づくりも含めた計画的な 輪作が重要であると考えらえます。

●防除基本対策
・基腐病の発病圃場からは、絶対に種イモを採取しない。
・健全な種イモを確保するため、未発病の圃場を種イモ専用圃場として管理する。
・苗床からは、前作の残渣は持ち出し、採苗終了後の速やかな耕耘および 夏場の耕耘や灌水などにより、圃場内に残った残渣の分解を促進する。
・苗床の土壌消毒は、殺菌効果のある剤を使用し、地温が15℃以上確保できる時期 に実施し、必ず処理後直ちに被覆を行う。
・苗床に種イモを伏せ込む前には、種イモを選別し消毒する

●薬剤による防除
繰り返えすことになりますが、圃場に病原菌を持ち込まないことが最も重要です。圃場に病原菌を侵入させないためには苗消毒と土壌消毒の徹底です。

種イモの消毒
 黒斑病を防除するため、トップジンM水和剤で種イモを消毒する。
 処理方法 200~500倍、20~30分間浸漬苗消毒
 ベンレート水和剤で苗を消毒する。
 処理方法 500~1000倍で植え付け前に30分間苗基部浸漬

本圃での消毒
苗消毒の効果は、定植後5~6週間は持続しますが、それ以降は消毒効果が低下します。本圃で発生が確認されたら場合は、周辺株への伝染防止のために異常株を除いた後、予防剤と治療剤を交互に散布します。
 予防剤 Zボルドー500倍 収穫前日まで
 治療剤 アミスター20フロアブル2000倍 収穫14日前まで

●恐れる病気ではない
サツマイモ基腐病の防除対策につきましては国の研究機関から「サツマイモ基腐病の発生生態と防除対策」が出されている他、都道府県の病害虫防除所やJA等から防除対策が出されていますので、それらを参考にしてください。
ある指導者は、「サツマイモ基腐病は苗の消毒や輪作などを徹底すればそれほど恐れる病気ではないと」と話しており、改めて基本防除対策の徹底を呼びかけています。

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